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花尊し

花尊し

太陽光発電 設計の手引き

太陽光発電システムの設計手法について
1.はじめに
平成8年1月25日

石炭・石油の大量消費、化石資源の枯渇、酸性雨、温暖化などの問題から、地球環境 に優しい無尽蔵のエネルギーとして太陽光発電が注目されている。 平成6年12月に閣議決定された新エネルギー導入大綱では、2000年までに太陽 光発電40万kW導入という目標が示され、国による公共施設への助成、住宅用への補 助、規制緩和等の新エネルギー導入政策が推進され、また、電力会社による余剰電力の 買取り制度が整備されている。 このような環境のなか、太陽光発電システム設計を受託し、これを 契機として、太陽光発電関連事業への参入の可能性を探り、技術力の維持に努めること を目的として、ここでは、太陽光発電システムの設計手法について述べる。

(注)平成8年1月以降、太陽電池の効率はアップ・工事費はダウンし、また 福島原発事故で自然エネルギーが脚光を浴びるなど状勢の変化は大きいが、設計手法の考え方の基本は変らない。

2.太陽光発電とは
(1)太陽光発電の原理
・太陽電池   半導体の光電効果により太陽光エネルギーを直流電気に変換

(2)太陽電池の種類
・シリコン半導体 単結晶、多結晶、アモルファス
・化合物半導体

(3)太陽光発電システムの分類
商用と連系しない独立システム
系統連系システム  
 
逆潮流有り系統連系システム  
逆潮流無し系統連系システム  
* 逆潮流;余剰電力を商用配電線に送電

(4)太陽光発電システムの構成
・太陽電池モジュール セル(素子)を直並列配線し、パッケージングしたもの
・アレイ       モジュールを直並列接続し、架台等に取付け、まとめたもの
・架台
・パワーコンディショナ(インバータ)、連系保護装置
・接続箱、ブレーカ、逆潮流電力量計、バッテリー

* 一般的な太陽光発電システム構成は下図を参照





(5)太陽電池の特性
・日射や負荷に応じI‐V曲線上の点で動作する。




(6)太陽電池の寿命
・20年以上30年期待(メーカー保証10年)
・法定耐用年数15年
・セルは20年以上特性変化無いが、配線等は傷む可能性がある。
・インバータ電解コンデンサは5~10年毎に取替

(7)太陽光発電の現状
・太陽電池 1kWp当り
電力量 約1000kWh/年   売電単価従量電灯2段料金 25円/kWh
面積 約7~9m2/kWp    効率1kWp/(7m2×1kW/m2)=14%
電池価格 約70万円/kWp   回収700,000/(1000×25)=28年

(8)太陽光発電の今後の在り方
・個人向けの建材(屋根)一体型が中心
・建材一体型について、難燃材から不燃材にするなどの建築基準法、消防法の改 正が望まれているが、現行法では耐火物扱いされていないため、個別に適用除 外申請しなければならない。

(9)太陽光発電の動向
・阪神大震災を契機に、自立運転機能付きインバータやバッテリー内蔵の非常電 源ユニットなどが開発された。
・太陽電池の冷却水を給湯に利用する光・熱ハイブリッドモジュールの製品化の動きがある。

3.太陽光発電システム設計フロー
システム設置場所の調査(建物形状、方位、日影の状況)
 ↓
太陽電池設置場所の選定(設置可能面積の算出)
 ↓
インバータ入力電圧の決定
 ↓
太陽電池モジュール直列数の決定(ストリング面積の算出)
 ↓
最大限設置可能なアレイ容量の算出(ストリング容量×設置可能面積/ストリング面積)
 ↓
レイアウ卜 設 計

*このフローは太陽光発電システム設計手順の導入部分を示しており、 設計の基本フローである。

4.太陽電池の設計
(1)設計の要点
アレイ容量
アレイ(システム)容量=最大出力(PMAX)×モジュール数
これは、最大日射強度(1kW/m2)における出力を示し、 曇天では10~20%に出カダウン。
傾斜角 緯度角-[2°~14°]  多雪地域では、50°~60°
方位角 負荷ピークに合わせて南向きからずらすことも。
結線  発生電圧の変動幅がインバータ入力範囲に収まるよう、直列と 並列を組合わせてモジュールを接続する。 影になるストリング数を最小にするようモジュール接続方法を工夫。
架台  風速60m/秒に耐える架台(屋根)強度

(2)太陽電池モジュール直列数の決定
・太陽電池モジュール直列数=インバータ入力電圧/モジュール最適動作電圧
*高温季の太陽電池の温度上昇(周囲温度+20~30℃)による最小電圧と、 低温季の太陽電池の温度低下による最大電圧の幅が、インバータ動作電圧範囲 に収まるように直列数を決定する。

(3)アレイ容量の算出
・太陽電池モジュール並列数=設置可能面積/ストリング(直列一続き)面積
・アレイ(システム)容量 =モジュール容量×直列数×並列数
*上式は、設置可能面積ベースのアレイ容量決定法である。

(4)発電量の計画
・年間発電電力量=年間日射量(kWh/m2)×アレイ容量(kW)/1kW/m2
・年間使用電力量=K(システム出力係数)×年間発電電力量
 系統連系システムの場合 K=0.58~0.83
*上式より、年間使用電力量ベースでアレイ容量を決めることもできる。
*年間日射量は観測データによるが、概略電力量算定は下図参照。





*正確には、日本気象協会「発電量の基礎調査」により計算する。

(5)架台の検討
・モジュール間隔 ネジ頭側 6~12mm 平板側 2~5mm
・アレイ間隔   冬至の9~15時で影にならないよう、アレイ間隔を決める。  概略的には下図「アレイ間隔の計算」参照。正確には、太陽の運行に関する数式(球面三角法)により計算する。
アレイ間隔の計算   


太陽の軌跡


・地上高さ    降雪がアレイから滑落堆積した時、モジュール下端に雪が掛からないよう、地上高さを決める。
 概略地上高さ=平年積雪深さ+アレイ稜長さ/3
 正確には、自然滑落雪の堆積に関する数式(防雪工学ハンドブック等)により計算する。

・傾斜角    観測データに基づく最適傾斜角は、下図参照。



 各月の最適傾斜角は、日本気象協会「発電量の基礎調査」参照。

(6)架台の施工
・地上設置 山形鋼トラス構造
・屋根設置 支持金具方式、緊結用固定線方式

(7)アレイ回路の構成
・逆流防止ダイオード 冬季の最大アレイ開放電圧に耐えるものを選定。
・バイパスダイオード 不調のモジュールをバイパスし、回路の開放を防ぐ。
・回路損失      集電ケーブル等のロス=アレイ最大出力×(1~3%)
           電線サイズ ≧2mm2
・地絡検出装置    地絡しても、日射があるかぎり発電し続けるので、建物
           火災防止に留意。
・接地        金属フレーム、架台等 300V以下 E3  300V超過 Es3
・雷サージ電圧対策  ツェナー・ダイオード
(8)留意事項
・寒冷地では、厳寒の早朝、冷えきった太陽電池に朝日がさすと、過電圧が発生 し、システム停止することがある。(直列数に注意)
・塩害対策は、既存のアルミサッシと同様、アルミフレームが、雨で洗われ問題ない。

5.インバータの設計
(1)インバータ入力電圧(システム電圧)の決定
・2~3kVA   → 200V
・10kVA、20kVA→ 300V

(2)インバータ容量の算出
・系統連系システム
   低発電設計   インバータ容量=アレイ容量×(0.7~0.8)
   高発電設計   インバータ容量=アレイ容量×(1~1.2)
・独立電源システム
   低発電設計   インバータ容量=アレイ容量×(0.3~0.4)
   高発電設計   インバータ容量=アレイ容量×(0.6~1)

(3)インバータの選定
・インバータは、単相3線式が一般的であり、3相3線式は少ない。
・インバータは、最大電力追従、待機損失無し、過剰応答無し、小型(高周波絶
 縁トランス使用)、無騒音(自然空冷)のものを選定すると良い。
・最大電力追従制御( Maximum Power Point Tracking )インバータ入力電圧を一定に保つ制御を行い
 DC電圧の設定値を上げ下げして最大電力点を探す方式
(4)留意事項
低発電設計は、アレイ容量が最大日射強度(1kW/m2)における出力であり、 通常運転はこれ以下であること、また、 日射強度が最大値に近づくと、素子温度が上昇し出力低下することを考慮した設計である。
高発電設計は、雪面反射や雲による反射等により、 日射強度が1kW/m2を超えることがある場合に適用する。
インバータは過負荷運転しないよう制御されるので、低発電設計はインバータのコストは低減されるが、 太陽電池のコストは増大する。
独立電源システムで、低発電設計すれば、モータ負荷がある場合、突入率 7~8とすると、 負荷の数十倍ものアレイ容量が必要となる。
太陽光発電システム(独立系)同士を連系運転すると、不安定現象を生じる場合がある。 連系運転する場合は、P-V特性の同じものを選定する。

6.設置費用
工事費について、一般的住宅3kWの例を示す。
 ・太陽電池       210万円[@単価70万円/kWp]
 ・接続箱         10万円
 ・架台         160万円
 ・パワーコンディショナ 120万円
 ・工事費        100万円
  合計         600万円

7.系統連系の方法
(1)法的手続き
 電気事業法の改正により、小出力発電設備は、大幅に規制緩和されており、出力
 20kW未満の場合は、一般用電気工作物となり、電気主任技術者・保安規程・法
 定点検が不要となった。

(2)電力会社との協議
 設備容量(契約又は出力・・・大きい方)50kW未満の場合は、低圧配電線への系
 統連系となり、系統連系技術要件ガイドラインにより協議する。
 ・協議項目  高調波(PWM制御インバータが良い)
        保護協調(単独運転検出等)
        電圧変動etc
 ・任意認証制度 10kW未満の場合は、日本電気用品試験所の認証試験に合格
         したインバータの使用が望ましい。

(3)電力会社への申込
  余剰電力購入申込、電気使用申込etc

(4)電力会社との契約
  電気需給契約、電力受給契約、配電線連系協定、運用申合

8.おわりに
 以上、太陽光発電システムの設計法について、概略的な手法を主に述べたが、正確な 手法については、専門的にすぎるのでここでは省略した。  太陽光発電が、ごく一般的になるのは、まだ先のことであるが、既に3kWシステム で、380万円というメーカーも現れており、技術革新のテンポに遅れないよう、日頃 の研鑚に努めたい。




平成8年1月25日


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